皆殺しの物語
□陸
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日が暮れて来た。
ひぐらしの鳴き声が、聞こえない。
それがどうしようもなく悲しかった。
「何を考えているんだい?」
「……………どうして、傷付くことを恐れないで戦うのか。どうして、戦わなければならないのか。ずっと考えてる」
でも答えが見つからない。
ボクは弱いから、何もしてあげられない。ただ見ているだけ。
「守りたいモノがあれば、それを守るために戦う。強くなれる。ヒトはそういう風に出来てるのさ」
「!!」
「戦わなければならない、逃げてばかりいたら解決にならないからさ」
家光に言われて、わかった。
綱吉達もボクと一緒なんだって。
守りたいモノを守るためなら、戦える。
なんだって出来る。強くなれる。
でも、ボクは今それを恐れている。
それはヒトを傷付けることが怖いから。
それはただ逃げているだけなんだ。
「ボクは、弱い……………」
「蒼唯ちゃんは普通の女の子なんだから。弱くていいんだよ。それに、ツナ達は近くにいるだけで満足しているよ」
「いるだけで、いいの?」
家光は笑顔でボクを見ていた。
ただいるだけ、見ているだけで、彼等の力になれるのだろうか?
でも、どうしようもないことだ。
ボクは戦うことが出来ない。
ボクは、弱い……………
綱吉のところへ戻って来たら、ハルと綱吉が話していた。隼人が一人で修行をしているそうだ。綱吉は慌て走って行く。
「シャマルの奴、やはり断ったか………。獄寺にはアイツ以外考えられないんだが」
森の方で爆発音が聞こえる。
嫌な予感と心臓の鼓動が止まらない。
「急ごう」
森の方へ走って行くと、傷だらけの隼人が見えた。
何がしたいの………?
傷だらけになってまで守りたいモノって、何なんだよ。あんなに傷だらけになって。
もし死んでしまったら、守ったモノに意味はないんだよ?
「蒼唯ちゃんはココにいな」
どうしてみんな、守りたいモノを守りきらないの……………
そんなに守りたいなら、しっかりと近くにいて守りきりなよ。
≪「ねぇ、蒼唯にお願いがあるんだ。僕にもしものことがあったら……………
沙都子のこと、詩音のこと、頼むね」≫
≪「お願いだよ。守ってあげて」≫
守りたいなら、近くにいて守りなよ。
傍にいてあげればいいじゃないか。
自分の大切なモノを、押し付けないでよ。
帰って来てよ、悟史。
沙都子の隣にいてあげてよ。
ボクに、笑いかけてよ……………
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