皆殺しの物語
□弍
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『夢』
それは、惨劇の記憶。
【前の世界】で抱えた痛み。
この場所でボクに関わった、全てのヒトに影響を及ぼしている。
最初から、出逢うべきではなかった。
ボク等は出逢ってはならなかったのかもしれない。
この場所に、いてはいけないんだ。
ボクは彼等の運命を狂わせてしまう、彼等に関わってはいけない存在なんだ。
そんな気がする。
それでも。
そうであるとわかっていても。
―――――蒼唯姉?」
「………ん?なぁに」
「蒼唯姉、なんだか元気がないように見えたから。何かあったの?」
元気がない、か。
いつもならヒトの死を見ても、次の世界では平然と振る舞えていた。関わりある人間の死でさえ悲しくなかったのに。
「少し、疲れたのかな」
この出口の見えない惨劇の迷路に、仲間とはぐれて一人でさ迷い続ける意味があるのだろうか?
自分に出来ることをすると決めたばかりなのに、ボクは嘘つきだ。
「なら、少し休もうよ。元気になったら、また遊んでね」
「……………そう、だね」
少し休めば、また前に進めるだろうか?
それとも、立ち止まったままなのか。
いつものように空を見上げても、何の解決にはならなかった。
解決にならないとわかっていたのに。
………?
なん、だろう。
同じ空のはずなのに違和感を感じる。
ドーンッ
あまり遠くないところで爆発音がした。
近くにいた武や隼人の表情も変わる。
「何だ!?」
「かなり近いぜ」
「…………フゥ太、ハル達と一緒にここにいて。ボクは京子達を探してくるから」
なんで、何故なんだろう。
どうしてボクは、あの爆発音の鳴った方へ行きたいんだろう。
行きたくないはずなのに、体が動く。
「蒼唯!!!?」
「テメェもアイツ等と一緒にいろ!!」
体が、勝手に動いている気がする。
ボクの意思に体の動きが反している。
行きたくないと思っている。
行かない方がいいとわかっている。
煙が立ち込める街中。
綱吉と京子、そしてその傍には額に青い炎を灯した少年がいた。
この世界の歯車は、既に回りはじめた。
直に、他の歯車も回り出す。
世界は異なる想いを持ちながら、
同じモノ達と運命を廻る―――――
◇世界◇end
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