皆殺しの物語


□弍
4ページ/4ページ
















『夢』
それは、惨劇の記憶。
【前の世界】で抱えた痛み。



この場所でボクに関わった、全てのヒトに影響を及ぼしている。
最初から、出逢うべきではなかった。
ボク等は出逢ってはならなかったのかもしれない。

この場所に、いてはいけないんだ。
ボクは彼等の運命を狂わせてしまう、彼等に関わってはいけない存在なんだ。
そんな気がする。

それでも。
そうであるとわかっていても。








―――――蒼唯姉?」



「………ん?なぁに」



「蒼唯姉、なんだか元気がないように見えたから。何かあったの?」








元気がない、か。
いつもならヒトの死を見ても、次の世界では平然と振る舞えていた。関わりある人間の死でさえ悲しくなかったのに。








「少し、疲れたのかな」








この出口の見えない惨劇の迷路に、仲間とはぐれて一人でさ迷い続ける意味があるのだろうか?

自分に出来ることをすると決めたばかりなのに、ボクは嘘つきだ。








「なら、少し休もうよ。元気になったら、また遊んでね」



「……………そう、だね」








少し休めば、また前に進めるだろうか?
それとも、立ち止まったままなのか。



いつものように空を見上げても、何の解決にはならなかった。
解決にならないとわかっていたのに。

………?
なん、だろう。
同じ空のはずなのに違和感を感じる。





ドーンッ





あまり遠くないところで爆発音がした。
近くにいた武や隼人の表情も変わる。








「何だ!?」



「かなり近いぜ」



「…………フゥ太、ハル達と一緒にここにいて。ボクは京子達を探してくるから」








なんで、何故なんだろう。

どうしてボクは、あの爆発音の鳴った方へ行きたいんだろう。
行きたくないはずなのに、体が動く。








「蒼唯!!!?」



「テメェもアイツ等と一緒にいろ!!」








体が、勝手に動いている気がする。
ボクの意思に体の動きが反している。
行きたくないと思っている。
行かない方がいいとわかっている。

煙が立ち込める街中。
綱吉と京子、そしてその傍には額に青い炎を灯した少年がいた。





この世界の歯車は、既に回りはじめた。
直に、他の歯車も回り出す。

世界は異なる想いを持ちながら、
同じモノ達と運命を廻る―――――














◇世界◇end
.
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ