罪滅しの物語


□弍拾陸
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綱吉は黙り込んだ羽入から視線を離した。
そして、犬と千種を向き合った。
2人とも傷だらけだ。山本や獄寺と戦った後、あの雲雀に打ちのめされている。
動くことも出来ないはずの体なのに、骸が無理矢理動かした。








「なんでそこまで骸のために?君達は骸に憑依されて、利用されていたんだぞ」



「わかった風な口をきくな………!」








犬と千種はあの頃と呼ばれる話を始めた。
羽入は泣きそうな顔で俯いている。

人体実験された彼等は、変わらない現状を打ち破った骸に感謝していたのだ。








「俺等に居場所が出来たんだ……………
それをオメェ等に壊されてたまっかよ!」



「……………俺だって、………俺だって、仲間が傷付くのを黙って見てられない。
だって………、そこが俺の居場所だから」








綱吉の言葉に犬達は黙り込んでしまった。
居場所を守るために誰かを傷付ける。
それは必然的に、他者である誰かの居場所を壊してしまうことになる。

俯いていた羽入が顔を上げた。










『梨花が………』



「………ぅっ、………梨、花……………、みんなが、みんなが………!!」



『っ!!!!蒼唯!起きましたのですか!?』










ずっとソファーに寄りかかっていた蒼唯が目を醒ました。
ゆっくりと起き上がった体は、覚束ない足取りでなんとか体を支えている。

舞台の上から傷付いた綱吉や倒れる骸達を見た蒼唯は、驚きと悲しみの表情で歪む。








「骸………」








蒼唯は舞台を降りると、骸に近づいた。








「骸さんに近づくじゃねぇびょん!」



「………っ、…ごめんなさい……………
でも、少しだけお願い。どうしても、骸に伝えておかきゃならないの。謝らなければならないの」








今にも泣き出してしまいそうな弱々しい声に犬と千種は押し黙ってしまう。
彼女を拒むことが躊躇われた。

蒼唯は骸の傷にそっと触れる。








「どうしてボクは、あの世界を否定してしまったんだろう………?どうしてボクは、貴方のことを忘れてしまったんだろう」



『蒼唯………』



「………ごめんなさい、ごめんなさい骸。
嘆いても仕方がないとわかっているのに、弱いボクは嘆かずにいられません」








蒼唯は謝罪の言葉を何度も繰り返す。
何度も、何度も。
謝罪の言葉だけがその場に響き渡る。

いつしか瞳から一筋の涙が溢れ落ちた。








「……………どうか泣かないでください。僕の愛しいヒト、蒼唯」



「骸………っ!!」








意識を取り戻した骸は蒼唯の手を握る。
蒼唯は涙目に微笑んで見せた。








「僕はまた、貴女を助けることが出来ないのでしょうか………?」



「ボクは、誰かに助けられたいなんてことを思っていません。誰かが傷付くことを、ボクは望みません」



『(蒼唯………、貴女はどうしてそんなに優しいのですか。自分を犠牲にして、自分を傷付けてまで守ろうとするのですか)』










羽入は心配そうに蒼唯を見守っている。
蒼唯は骸の体を抱き抱えた。
















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