罪滅しの物語


□弍拾壱
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男から六道骸の話を聞き、綱吉達は怒りに燃えていた。そんな中、羽入は何かに気付くように俯いていた顔を上げた。

空を見上げると、わかる。
空は繋がっているとあの子は言った。
あの子の心も、まるで空に映しているようにわかる。










『蒼唯が、泣いているのです……………
泣いているのです、蒼唯が泣いていますのです!!あぅあぅ、あぅあぅあぅあぅ』











羽入はその場で地団駄踏む。
その子供が跳び跳ねるような音は傍にいる綱吉達にも聞こえていた。








「お、怒ってる………!!!?」



「『オヤシロさま』を怒らせやがった!!」








慌てふためく綱吉、何やら謝り続ける獄寺の姿を横目にしながら。男はその場所を、羽入のいるその場所を見ていた。

小さな子どもが、訴えかけている。
あの子が泣いていると、悲しんでいると、怒っている。








「蒼唯という娘なら、骸の所にいる」



「「!!!?」」








男のいきなりの言葉に、綱吉と獄寺は驚いた。羽入は地団駄踏むことを止める。
男の視線は真っ直ぐ自分に向けられていることに気が付いた。










『ぼ、僕の声が…、貴方に聞こえていますのですか………?僕の声が?ぼ、僕のことが、見えていますのですか………?』



「……………骸から少し話を聞いている。
蒼唯という娘と、【別の世界】で出逢ったのだと。あの娘は、【世界】を繰り返すのだと」



『蒼唯はそんなこと………!!骸とは、この世界で初めて逢いましたのですよ!』



「あの娘は何も覚えていない、忘れているのだろうと骸は言っていた」








綱吉達には男が独り話し出したようにしか見えなかった。

しかし、誰かと会話をしている。
自分達には見えない『誰か』と話し、彼にはその姿が見えている。








「(蒼唯と、同じだ………)」








綱吉は知っている。
蒼唯の傍にいつも『誰か』がいたことを、いつも『誰か』と話していたことを。

男は綱吉に向き直った。








「よく聞けボンゴレ、骸の“本当の”目的は……………っ!!」








言葉が止まった。
男は綱吉を突飛ばし、庇うように立つ。
そこへ飛んで来たのは、毒針。それは男の体に突き刺さる。

攻撃して来た人間の気配は直ぐに消え、男はその場に倒れた。
綱吉は慌てて彼に駆け寄った。








「目的は口封じだな」



「そんな!だ、大丈夫ですか!!!?しっかりしてください!!」



「散々な人生だったぜ」








死を悟るような物言い方に、綱吉は顔を青ざめる。

男の名前はランチア。
綱吉が名前を呼び掛ければ、力なく笑う。

羽入はそっと彼の近くに寄った。










『貴方は、雛見沢と違う惨劇に巻き込まれた一人だった。また、廻りますのですよ』



「………そうか……、お前が……………
『オヤシロさま』……か………」



『どうか、嘆かないでください』










羽入は泣き出してしまいそうだった。
雛見沢とは異なる、梨花を取り巻く世界と違う運命に翻弄される彼が、あまりに残酷だったから。

ランチアは一瞬目を見開くと、羽入に向けてそっと微笑んで見せた。








「お前は………、諦めるのだな………」








ランチアはそう言うと静かに目を閉じた。
彼の言葉がどんな意味を持つのか、羽入は知らない。知らないまま世界は廻る。

羽入もそっと目を附せた。















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