罪滅しの物語


□拾伍
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放課後、蒼唯は京子と一緒に学校を出た。
今日1日、蒼唯は京子から離れようとはせず、いつも屋上で摂る昼食も、京子や花と共に教室で食べていた。

綱吉達を避けている蒼唯の行動。
悪気はないはずだ。
その証拠に、こちらから話し掛けると、困ったように笑って、蒼唯自身も辛い様子でその場を離れていた。
避けていることを申し訳ないようにして。









「俺等、避けられてたのな…」



「嫌われちゃった…、かな」



「あのバカ…!!」








図書室から校門を出る蒼唯の姿を見守る綱吉達は、自分達のせいだろうかと落ち込み、避けられていることに少なからずショックを受けていた。

それでも。
見下ろす蒼唯は京子と共に笑っていて。








「元気出たみたいで、良かったよね」



「笑ってた方が、蒼唯らしいしな」



「…アイツは何も考えないで、馬鹿みたいに笑ってりゃいいんだ」








昨日の悲しみの姿はない。
それは、嬉しかった。








「もっと蒼唯のこと、分かってやろうぜ。そうすりゃ、蒼唯が何を悩んでいるのかも少しはわかるかもしれねぇしな!」



「そ、そうだよね」



「ちっ、野球馬鹿のくせに仕切ってんじゃねぇよ!!10代目、調べましょう!」








彼女を、蒼唯のことを知ってあげたい。
その悲しみも、その苦しみも。

3人はその一心で雛見沢のことが書かれた本のページや新聞の切り抜きを捲った。










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「はひ〜、プ、プリティーです!キュートです!可愛すぎです!!」



「ぷ、ぷりてぃ〜?きゅーと?」








綱吉達が雛見沢の資料と格闘しているその頃、
蒼唯は自分の苦手な片仮名言葉を連発する少女と出逢っていた。

並盛とは違う制服。
明るく笑う彼女の様子は、どこか可愛い物を見て暴走してしまう友人に似ていて。
片仮名の言葉の意味を知る前に、スキンシップを求められ蒼唯は困惑しながらも、決して悪い人間ではないのだろうと成されるがままであった。








「きょ、京子〜(泣)」



「あはははは、ハルちゃん、蒼唯ちゃんがびっくりしてるよ」



「はひっ!!す、すみません、つい。ハルは三浦ハルって言います。蒼唯ちゃんのことは京子ちゃんから聞いていますよ!本当に可愛いですね!!」



「あぅ…、むぅ」







蒼唯は恥ずかしそうに俯いた。
照れているその様子は、小動物のような愛らしさで、周りの人間も赤面させた。








「じゃ、じゃあどっか行こうか/////!」



「そ、そうですね/////!!蒼唯ちゃんはどこか行きたい所ありますか?」



「行きたい所?……………甘いものが、食べたいのです」








間を空けて、空を見た蒼唯が応えると、2人は顔を見合せて笑った。
蒼唯は2人の笑みに安心したようにホッと一息ついた。



行き先は彼女達行き付けのケーキ屋。
ちょうど店からは制服姿の2人組が出てきた。

自分達と年の変わらないような男女のカップル。
少女の方が蒼唯に気付き、驚いた顔で、少し控えめに声をかける。








「蒼唯、ちゃん………?」



「……………夏美?公由夏美?」








蒼唯が言葉を返せば、その少女は蒼唯に思いっきり抱き着いた。








「き、公由!?」



「蒼唯ちゃんだ!蒼唯ちゃんだ!!」



「な、夏美………、痛いのです」








一緒にいた少年は、蒼唯が夏美と呼んだその少女の行動に驚いていた。
蒼唯の声に、夏美は抱き着いた手を緩め、少し離れる。








「ご、ごめんね!!」



「大丈夫…、本当に久しぶりなのです。元気そうで良かったのですよ」








夏美はほんわかと笑って見せた。

公由夏美。
雛見沢御三家、『公由』の家の子。















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