罪滅しの物語


□肆
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学校を出る頃。
夕日は既に沈み、辺りは暗くなっていた。

街頭の明かりが頼りなさげに、彼等の帰路を照らしている。
そんなに長い時間学校にいたつもりはないのだが。
ただ忘れ物を取りに戻っただけで、こんなにも騒動があるとは思ってもみなかった。








「天覇って転入生だったのな!」



「あの噂になってた転入生だよね。どこか遠くの、なんとかって所から来たっていう……………」



「まさかこんなチビ女だったとは」








蒼唯を転入生と知った綱吉達は、ここ最近に学校内で専らの噂になっていた転入生の話を思い出していた。
確かに1ヶ月程前に転入生の話題があったが、結局その話題の中心である転入生はいつまで経っても姿を見せず、噂を流した誰かの作り話ではないかと言うことになった。

それが今日の放課後になって、まさか自分が会うことになるとは。
雲雀と遭遇することよりも想定外の事態であった。








「天覇さんは家どのあたりなの?」



「もう暗いからな、俺達で送ってくぜ!」



「……………10代目が仰有って下さってんだからな、今度こそ感謝しろ!!」








蒼唯は俯いたままずっと黙っている。
何か気に触るようなことを言っただろうか?

綱吉達は各々心配して、声をかける。








「天覇?」



「天覇さん、どうかした?」



「…んだよ、気分でも悪りぃのかよ」








俯いていた顔をあげると、表情を固くしていた蒼唯は恥ずかしそうに頬を赤く染めていた。
何か決意をしたような。
それでも、それが気恥ずかしい様子で。

蒼い瞳を揺らがせながら、蒼唯は一呼吸落ち着けて、言葉を選んでいるようだった。








「……………『天覇』じゃなくてね、『蒼唯』って、呼んで欲しいんだ。名字で呼ばれるのは………、嫌いなんだよ」



「お、じゃあ俺も武な♪」








蒼唯の願いに、山本は自然に言葉を返した。
その言葉に蒼唯は表情を綻ばせた。

その笑顔が見たくて綱吉も、素直になれない獄寺も、彼女を『蒼唯』と呼ぶことにした。
ただそれだけのことなのに、蒼唯はただただ蒼い瞳をキラキラさせて笑ってくれる。








「武、隼人、綱吉。これから、よろしくね」



「おう!」



「けっ/////」



「よ、よろしく!!」








蒼唯は満足そうに笑った。

薄暗くなる帰り道。
他愛ない会話、前に住んでいた所はどんなところか、何が好きか、どんなことが得意か…
少しだけ蒼唯のことを知る。
蒼唯も、綱吉達のことを聞いて、笑ってみせて。



と、冷たい風が吹き抜けていく。
風は、ざわざわと木々の葉を揺らす。
蒼唯は笑顔一変させると、暗くなった空を見上げる。

その表情は悲しげで、真剣な面持ちだった。















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