雛見沢決戦編


□拾弍
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しばらくして山狗に連れられた梨花が姿を見せた。その表情は絶望ではなく、反撃の可能性を信じている。
そう、ボクらが山狗に捕まったからと言って、この世界は終わりじゃない。

梨花はボクの姿を見て、安心したように肩の力を抜いた。









「蒼唯、無事で良かったのです」




「ボクは大丈夫だよ。梨花も、大丈夫そうだね」









決して諦めた表情ではない梨花を見る限り、みんなは無事だ。きっと助けに来てくれる。
ボクらはまだ負けたわけじゃない。

小此木はボクらの再会を阻むようにその間に割り込んでくる。









「探しましたんね、梨花さん。あなたは大事な身なんですから、急に姿を消されちゃたまりませんね」




「………み〜」



「では、蒼唯さんと一緒に診療所に来てもらいましょうか。お前達は行け」








小此木の指示に梨花を連れて来た山狗達は再びぞろぞろと地下の方へと戻って行く。
何をしに戻る必要があるのか、ボクと梨花は表情を固くする。









「や、約束を、破る気ね………」



「約束?そりゃ何の話ですんね。へっへへへへ」



「……………くッ」








駆け出そうとしたボクと梨花を、小此木と山狗の隊員が拘束する。抵抗するが力強い握力を前にボクらの力ではどうすることも出来ない。

隊員の一人が注射器を取り出し、梨花の前に迫っていた。
命を脅かすものではないだろう。
おそらく、梨花を昏睡させてしまうような薬が入っている。鷹野にとって重要なのは生きた女王感染者であって、喋る古手梨花ではない。









「ん、んんんんんんんんんッ!!!!」



「梨花、梨花!!」



「慌てなくても蒼唯さんは次ですんね、よく見ていてくださいよ」








梨花が悲鳴をあげようとするより早く、別の隊員が後ろから梨花の口を押さえる。

見ているだけなんて嫌だ。
梨花が昏睡させられた後に自分も同じような目に遭うなんて嫌だ。
暴れても拘束を抜け出すことが出来ず、ボクは梨花を助けられずにいた。











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