雛見沢決戦編


□玖
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興宮に来るのは久しぶりだ。
まぁ、『えんじぇるもーと』での凄まじい戦いや、玩具屋での部活大会とかいろいろ思い出はあるけど。

玩具屋の前を通ると、硝子の向こうに大きなうさぎのぬいぐるみが飾られていた。



悟史が買おうとしていたのは、大きなくまのぬいぐるみだったっけ。
詩音のすすめで予約をしていたぬいぐるみを取りに行ったあの日。悟史は消えた。

全てが終われば沙都子のもとに帰って来ることを、ボクは信じて待っています。








「あれ?蒼唯じゃないですか」








振り返れば、何やら包みを手にした詩音が駆け寄って来た。

ずっと待っている。
ずっとずっと信じて待っている。
世界を壊すほどの強い想いを胸に秘めて、彼女は待っているんだよ。








「蒼唯が興宮に来るなんて珍しいですね。今日はどうしたんです?」



「仲間を、探してるんだ。詩音のそれは、御供えだよね」



「蒼唯にはお見通しですか。毎年あの鬼婆が拵えたおはぎと庭に咲いた紫陽花持っていくんですよ」








変わりはじめている。
本当はボクが知らないだけで、もっと前々から変わっていたのかもしれない。

嬉しくて、思わず笑みを浮かべていた。








「詩音が信じれば、奇跡は起きるよ。詩音は変わって、世界も変わり始めたから」



「ぇ………?」








詩音はわからないという表情でボクを見ていた。忘れている、それでも構わない。
詩音は本当に変わったのだから。

たとえ、彼女の大切な人を想う気持ちが、惨劇を招き、世界を壊してしまったのだとしても。ボクは彼女を責めない。
責められるはずないよ。
詩音も大切な仲間なのだから。








「もう、蒼唯ったら!何なんですぅ、1人で楽しそうに笑っちゃって。私の顔に何かついてますか?」



「なんでもないよ、にぱにぱ☆」



「梨花ちゃまの真似して誤魔化そうなんてダメですからね!」








ふざけあっていた詩音の腕が、近くに停めてあった自動二輪車に当たった。

当たり所が悪かったのか、停め方が悪かったのか………。おそらく後者。
並んで停められていた自動二輪車はまるで『どみの倒し』のように倒れてしまった。








「…あ」



「……………ここは路上駐車禁止だよね」








倒してしまったことに変わりはない。
ふと朱唯を見てみれば呆れた顔をして肩を竦めていた。















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