蒼穹のファフナー

□この瞬間 〜いま〜
1ページ/1ページ

―――校舎の外…。

「―――――」

ふと誰かに呼ばれた気がして、皆城総士は歩みを止め、後ろを振り返った。
そこには真壁一騎か笑顔を浮かべながら立っている。
「一騎か。どうした」
総士は、今度は身体ごと向き直って話を聞く体勢をとる。
「あ、いや別に…。ただ総士の髪って綺麗だなって思って…」
そう言いながら、一騎は一歩づつ総士に歩み寄っていく。
「急に何を言い出すんだ。今はそんな事言ってる時ではないだろう」

―――今は平和じゃないから―――

総士の言いたい事を悟ったのか、一騎は総士の目の前に立ち、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「でも、この瞬間<いま>は平和だろ…」
「……」
「平和だったら、もう少し早く、気が付けたのかな…」
そう言って、総士の前髪に優しく触れる。

さら……。

茶色の髪が太陽の光を反射して煌めく。
髪の下の傷が顔を覗かせた。
一騎は静かに言う。痕が残ってしまったね、と。
そんな事は気にしていない、と総士は呟く。
「むしろこの傷が、僕を、僕たらしめた。だから、僕はお前に感謝しているくらいだ」
真っ直ぐ見つめる総士の瞳の中には一騎が、
一騎の瞳の中には総士が、それぞれ映っている。
総士が口を開いた。
「…僕が、ひとつになろうと言った事、憶えているか…?」
「あぁ。あの時は、急にどうしたんだろうと思った…」
一騎が苦笑をw滲ませながら視線を外す。
昼の爽やかな風が吹いて、二人の髪を、衣服をなぶっていく。
一騎と総士は風の軌跡を辿るように顔を上げた。
太陽が二人の頭上で輝いている。
一騎と総士はいつまでも、風の行方をおっていた。   −完−

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ