その他 過去拍手文

□『優子』
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「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ッ」

ボクは自転車で駆け抜けた。
周りの風景はスピードをあげて後方へと流れゆく。
ボクに聞こえるのは、自分の荒い息づかいと、風が耳の横を凪いでいくゴォォォという音だけ。
脳裏には、彼女の事だけしか浮かんではいなかった。
優子。
ボクの存在を受け入れてくれた、唯1人の人。
両親のいないボクは、幼い時から親戚の家をたらい回しにされてきた。
何故か誰もがボクを忌み嫌った。
孤独という闇に押しつぶされかけた時、ボクは優子と出会った。
前の家を追われ、また、回された先の家に優子はいた。
初めて優子を見た時、優子は、太陽だと思った。
優子は、優しかった。
優子は、暖かかった。
優子は、強かった。
優子は、可愛かった。
優子は、おっちょこちょいだった。
優子は、ボクに笑顔を見せた。
優子は、ボクに笑顔をくれた。
優子は、家族だった。
優子は、お姉さんだった。
優子は、……。






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